Google Loonプロジェクト
Kenyaで長らくPoCが進められていたGoogle loonプロジェクトが終わりを告げたというリリースがあった。個人的にGoogleのMoon shotプロジェクトは興味があっただけに、残念な気持ちでショックを受けたニュースだった。Google XのCEOであるAstro Tellerは、「想定よりも商用化までに長く、リスキーなプロジェクトとなることが判明した」と結んでいたが、実際のマネタイズに漕ぎ着けるのに相当苦労したのだろうと想像される。
実は、Google loonプロジェクトに興味を持ちつつ、関連記事などをリサーチしていた時期があったため、それも合わせてこちらに備忘録として残しておきたい。
■Softbank(High Altitude Platform Station)
成層圏に飛行させた無人航空機を通信基地局のように運用させるモデルで、softbank系列の子会社が手掛けているプロジェクトである。広域のエリアに通信サービスを提供する(空飛ぶ基地局)モデルとして、Google loonよりはより運用コストが掛かるものの、機動性の観点で優れたモデルと思われる。Rwandaで既に共同研究が始まっている。
NASA(アメリカ航空宇宙局)のアームストロング飛行研究センターでは、ソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「HAWK30(ホークサーティー)」のテストフライトに成功している。(HAWK30については以下URLを参照)
https://www.hapsmobile.com/ja/technology/
https://www.hapsmobile.com/ja/news/press/2019/20190425_01/
サムネイル画像である程度のイメージが持てると思うが、全長約78メートルの想像以上にデカイサイズの飛行物体であり、ソーラーパネルを搭載した翼には10個のプロペラが装着、平均して時速約110キロメートルもの速度で飛行することが可能としている。雲などよりも高い高度を飛行でき、比較的風が穏やかに吹く成層圏の特長を活かし、数カ月の長期間を安定飛行できる。(以下Wikipedia)
https://www.wikiwand.com/ja/HAPS%E3%83%A2%E3%83%90%E3%82%A4%E3%83%AB
CEOはsoftbankの宮川潤一氏(softbank COO/CTO, Sprint COO)が勤め、HAPS自体は、無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)メーカーのAeroVironment社とソフトバンクの合弁の形をとっている。同社は、太陽光発電による動力を用いた高度60,000フィート(約23,000m)以上で飛行するHAPSを開発し、通信に活用をしている。
2019年8月には、南アフリカ共和国オーツホーンで、Facebookが行った成層圏通信プラットフォーム「HAPS」の実証飛行デモンストレーションに同社とともに参加している。
更には、Google loon社とHAPS社が共同して、事業の普及・発展を目指して協力しているような記事も発見した。このプロジェクトでは、HAPSを通して山岳部や離島、発展途上国といった通信ネットワークが整備されていない場所・地域へ安定したインターネット接続環境を構築するというビジョンを目指している。
宮川代表にインタビューした、Google loonとsoftbank社の共同事業における記事もあったので残しておく。記事内では、「2020年2月に、通信用の成層圏気球で実績があるLoonと共同でHAWK30用の通信機器を開発」としている。宮川代表は記事内で、「通信やインターネットをなりわいとする会社が、人類の半数がインターネットに接続できていない状況を放置していいはずがない」という思いから競合とも言えるGoogle社と組んだという。Google loonの気球とHAPSモバイルが飛ばす無人航空機は、成層圏で相互に連携させ、補完し合う関係になる。そこには、初期から競合とぶつかり合って体力を消耗させるよりも、「強い2社」で組んだほうが市場を素早く広げられるはず、という思いがある。
また、「HAPSアライアンス」といった大きな枠組みでの提携が存在していた事も分かる。
2020年2月にHAPSの普及と関連技術を開発する企業連合が設立され、構成企業は12社。その内訳としては、HAPSMobile、AeroVironment、Google Loon、Airbus Defence and Space、バーティ・エアテル、中国電信、ドイツテレコム、エリクソン、インテルサット、ノキア、ソフトバンク、テレフォニカなど、大手通信会社が多く参画している。
最後に、Google Loonプロジェクトのリリース当初や途中進捗の記事をReferenceとして上げておく。
2013年にGoogle Xの一環としてスタートした本事業は、 Telkom Kenya(ケニア国内No.3の通信会社,400万人ユーザーを抱え, 6%シェアを有する)とパートナーシップを組んで進められていた。大手の2強と組まなかった理由、というより組めなかった理由は、事業がマネタイズに繋がるかもわからないPoCの段階であった点が予想される。プロジェクトでは全部で35のバルーンが打ち上げられ、日の差す午前6時から午後9時までが利用可能としていた。
蛇足だが、ここまでは主にアフリカ(ケニア)での話だが、Loon projectは 2015年頃からインドでも取り組みが始まっていた様子である。
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