書評『アフリカ社会を学ぶ人のために』

この手の本は総じてお堅いのが玉に瑕なんですが、なんとか斜め読みで1時間で興味あるとこだけをすくい取って読み終えられました。多くは既知の情報だったけれど、定量的な数字も織り交ぜられていて、結構参考になりました。


特に面白かったのは、「歴史的背景」と「イノベーション」の2点。

前者は、人類史のDNAの話まで言及したり植民地時代の遺恨の話を持ち出してかなり長い線を繋げて説明がなされていてよかったです。後者は、携帯送金の普及とか既知の情報が多かったけれど、定量面の数値は参考になりました。



以下、本文を引用して気になった点を言及。


【歴史的背景】


=========================================

「何十とあるアフリカ援護の中から一つを選ぶことは、民族対立の原因ともなりかねないので、中立的なヨーロッパの言語が選ばれた」という言説が今でも多くの人に信じられている。しかしそれは、植民地支配の体制をそのまま引き継ぎ、権力を移譲されたアフリカ人エリートたちの権力保持のための言い訳に過ぎず、また、独立後もアフリカ諸国を新植民地主義の支配体制の中においておきたかったヨーロッパ諸国の思惑でもあった。

=========================================

宗主国であるヨーロッパ各国はアフリカを支配下に置きたい。

なので、発言力のある現地の権力者を庇護する。

その見返りとして彼らの統治下に置かせる。

途上国側の一部の特権階級と先進国側の談合という癒着みたいなどこにでもある話ですが、これがはびこってしまっているのが良くないんです。

アフリカや東南アジアなどの途上国での、賄賂政治などが横行するような政治の腐敗は、この体制が根本な気がします。


=========================================

アフリカ以外の地域に住む現代人は、比較的新しい時代まで共通のミトコンドリアDNAグループを持っていたこと、それはアフリカ内にあったことを強く示唆する。

=========================================

人類発祥の地として知られるアフリカですが、何をもってそう言っているのか今まで分かりませんでした。

が、この文章で理解できました。

実は中学に理科で習ってたミトコンドリアくんが人類史の研究に役立っていたんですね。

他の微生物と同列で見てたけど、もっとちゃんと特別扱いで接してあげてればよかった。


=========================================

つづいて調理が始まった。調理は、栄養級効率の上昇、感染防止に効果がある。また、暖を取ることよりも、より高緯度地域への拡散で効果的であったと考えられる。

=========================================

ホモ・サピエンスが「火」を管理できるようになったことで、元々赤道近辺に端を発した人類の祖先が、より寒い地域へ行けるようになりましたよ、というお話。

確かに、ロシアとか永久凍土あるような地域に裸同然の猿は行けないわけです。

なんとか火を起こして寒さを凌ぐ中で、「寒さ」に抗ってきたのでしょう。

火の扱いを覚えた事が人類史上でも凄く重要なことなのだな、と改めて感じました。



【イノベーション】


=========================================

2000年に固定電話加入者を追い越した携帯電話使用者の数は、2012年末には7億3000万人を超えると指摘されている。2000年当時、わずか2%足らずの都市富裕層のステータス・シンボルだった携帯電話は、その10年後には都市の下層民だけでなく農耕民、さらには乾燥地帯の牧畜民や密林の狩猟採集民の一部まで、総人口の63%もの人々が身につけている日常の必須アイテムとなったのである。

=========================================

アフリカで良く言われる携帯普及成長率の話。

途上国の中でも一際、未発達であることが指摘されるアフリカではあるものの、その分、白地(ブルーオーシャン)の大きさと圧倒的な人口成長率が期待できます。

そして、あるブレークポイントを超えると一気に加速していく。

これもアフリカの面白さの一つでは無いでしょうか。

日本じゃこんな大規模で爆発的な普及は考えられません。


=========================================

例えばナイロビで日雇い労働に従事する夫が2日分の日当である1000シリング(≒1000円)を村の妻に送る場合、夫の手数料は30シリング、妻の支払う手数料は25シリングのみである。最高で7万シリングまで送金可能だが、その場合でも手数料は送りて100シリング、受け取りて300シリングに抑えられている。

=========================================

ちょっと前に、『M-Pesaの破壊力』というブログで単純な計算を行ったことがありました。

ただ、これはケニアのGDPに対して一定の手数料率でかけ合わせたので、上記のように高額になるほど割り引かれる(しかも上限が決まっている)システムなのであれば、修正が必要ですね。。

https://hikaru-hirose.amebaownd.com/posts/1607405

実際には、手数料だけでの儲けはかなり少ないかもしれません。

とは言え、所得層でみたピラミッドで言うところのボトムの方にいる層が殆どのアフリカでは、少額決済がおそらく大多数だと思うので、そのインパクトのほどは計り知れません。


=========================================

今やアフリカに在留する中国人の数は100万人を超える(ちなみに日本人は7000人弱)。

=========================================

これも良く言われる話で、いまや日本は途上国に対して圧倒的にプレゼンスを発揮できていない弱小国。

加えて、人口ピラミッドは高齢化して若者層が減って行く一方。

このままではホントに日本はやばいと思います。。



https://www.amazon.co.jp/%E3%82%A2%E3%83%95%E3%83%AA%E3%82%AB%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E3%82%92%E5%AD%A6%E3%81%B6%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AB-%E6%9D%BE%E7%94%B0-%E7%B4%A0%E4%BA%8C/dp/4790716163

HIKARU's Ownd

https://www.facebook.com/hikaru.hirose.3 https://www.linkedin.com/in/hh1106/ http://www.slideshare.net/HikaruHirose https://twitter.com/hikaru1106 https://www.instagram.com/hikaruuu_1106/

0コメント

  • 1000 / 1000