ジェフ・ベゾス 果てなき野望

Amazonについて最近色々と見ている中で、以下の書籍を読みました。今までAmazonという企業を偏った側面でしか捉えていなかったのだと反省させられました。すごい会社。

1998年に人事のアリソン・アルゴアがベゾスとMTGし、「どのような価値をAmazonは重視するのか」について話し合った。項目は以下の6点。

・顧客最優先

・倹約

・行動重視

・オーナーシップ

・高い採用基準

・イノベーション

後のLeadership Principlesの礎になるものが1998年当時に上記のようにリストされていた。

■顧客最優先

最も感銘を受けるのが1つ目のこの項目である。AmazonほどTOPのベゾスから社員から組織づくりから、何から何まで徹底されている企業は無いのでは?と思うほど。


印象的なのは、MTGでのPowerPointの廃止で、散文形式のプレスリリースのようなものにせよ、というもの。社員に説得力のある文章を書いてほしいという狙いと、顧客の手に届く文章から逆算してビジネスを考える(顧客にどう情報が届くかを知る)癖付けの狙いがあるそうだ。分量は6ページ以内という制限が設けられ、MTGでは最初の15分間で黙読し、その後に話し合いが始まる。


また、案件の緊急度を5段階に分ける文化があるという。

すぐに対応が必要な案件に対してはエンジニアのポケベルがなりっぱなしになり、その対応策と敬意もSチームへ事後報告の必要がある。これとは別に、ベゾスは顧客からの問合せもチェックしており、問題メールは疑問符を付けて転送するようにしている。

例えば、「ローション事件」があり、顧客にメールが送りつけられる中でクレームが上がったというものだ。一人の顧客が嫌な思いをしたら、即すべてのシステムを改善させてしまうほどのレベルである。

レビューを取り入れた際に、否定的な意見も書けるようにしている点も顧客第一主義から導かれたものである。


■倹約

倹約については色々な逸話がある。

・ドア材の机を使う

・駐車料金の会社補助を最低限に抑える

・MTGスペースのテレビを撤去させる

・社員との1対1の個別面談を辞める

などなど。


■行動重視

行動重視として、ベゾスも現場主義である逸話もある。MITのグレイブス教授が初めてベゾスに会った際、ベゾスは工場で腕まくりをしてコンベアに乗り上げ、物流のアイデアを同僚と出し合っている姿が印象的だったと言っている。また、毎年秋には、ホイッスルストップツアーと称してFC視察をベゾス本人がしているようだ。


■高い採用基準

高い採用基準に関して、また、徹底した実利主義がなされている。

採用条件は、会社の実績を直接的に高める人でなければならない。ほしいのはエンジニア・開発者・バイヤーなどの実働部隊であり、管理者はいらないのだ、と。


■歴史

1999年時点で、売上は対前年比で95%増、登録アカウント数は2000万人超、ベゾスがタイム誌の「今年の人」に選ばれる快挙もあったようだ。当時、自分はまだ高校生だったとはいえ、既にAmazonのマーケットがここまで大きくなっていた事を全く知らなかったことに、ドメスティック人材の自分への危機感が今更ながらより募る。。


■物流の超重要ファクター

2000年に始まった、今のAmazonをAmazonたらしめる最も重要な要素として、物流のイノベーション=Fulfilment by Amazon(FBA)の存在が挙げられる。その原型となったのが、トイザらスの在庫をAmazonの物流センターに置く、という取り組みだった。

2002年には、在庫の評価方法を後入れ先出し法(LIFO)から先入れ先出し法(FIFO)に変更している。自社所有の商品とトイザらスや提携企業の商品とを区別できるようにするためだと言う。商品を効率よく発送し正確な時間を顧客に示せるというのはこの上ない競争優位を築いている、ベゾスの最も投資したポイントである。


Amazonは、顧客それぞれへのカスタマイズ性が飛び抜けている。ある注文とまったく同じ内容の注文は二度と来ないかもしれない。それゆえ、「Amazonの作業内容は小売業より製造・組立の現場にずっと似ている」と言われている。その通りなのだろうと推察する。


似たような考えとして、「アンストア」という概念があり、小売業の常識に縛られる必要の無い事を標榜している。当初の物流センターは、GMが電話で連絡を取り合いフル運用できる施設を人的に判断していた。そこから、アライドシグナルで学んだプロセス駆動型のやり方、シックスシグマの導入へ至る。更に、トヨタのリーン生産方式を組み合わせる(欠陥に気づいた作業員には赤いコードを引いて生産ラインをストップする権限が与えられる)。


■マーケットプレイス

Amazonが上手な使い方として、未知の商品を扱う場合、経験豊富な小売業者にマーケットプレイス経由で商品を販売させ、手数料を受け取る。同時に彼らのやり方を見て学び、徐々に自分たちの手で直接仕入れなどを行っていく。市場はだんだんと淘汰されていき、Amazonのみがマーケットに君臨する存在となっていく。


■カルチャー

組織づくりに対する想いとして面白いエピソードも。

「コミュニケーションは機能不全の印だ。緊密で有機的につながる仕事が出来ていないから関係者のコミュニケーションが必要になる。部署間のコミュニケーションを増やすではなく減らす方法を考えるべきだ。」

ベゾスは分散・分権型の自律的な意思決定ができる組織経営を理想としている。


■Others


・AWSの開発

「世界的大企業と同じインフラを寮に住む大学生が使える世界を創る」というコンセプトは素晴らしいと思う。


・A9

Amazon初の開発センターとなったパロアルトの施設で、Algorithmsの9文字を短くした名前を付けた。Amazon内の商品検索に活かすための技術開発が行われる。後に開発責任者のマンバーがGoogle幹部に引き抜かれる事件が起こり、ベゾスが激昂する一幕もある。


・ラボ126

電子書籍リーダーKindleの開発チームである。数字はアルファベットのa(1)からz(26)を意味し、出版されたあらゆる本を顧客が買えるようにするという想いを込めているようだ。


・コンペティティブインテリジェンス

2007年に財務部の中にグループを設置、ライバル会社から大量の商品を購入し、サービスの質とスピードを測定する専門部署らしい。


・Sチーム

ガリを抜擢したことから始まり、S=Seniorの意で、重要な意思決定を判断している。


・宇宙への熱狂

ベゾスは実は大きくなったら宇宙飛行士になりたいと思っていたらしい。現在のBlue Origineという組織の立ち上げにつながっている。スタートレックの熱心なファンでセリフがそらで言えるほどで、ジュールベルヌやアイザックアシモフなどの本を読み耽る少年時代だったとか。

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