WWF黒書

www.amazon.co.jp/dp/484611516X

最近、プロボノの活動でWWFジャパンのプロジェクトに関わらせて頂く機会がありました。国際機関として確固たる地位を持つWWFですが、その組織自体にも興味があり、本書を手に取るに至りました。

また、環境問題しかり、社会問題しかり、大きな組織には様々な事が言われる事があります(虚偽もありますが)ので、物事を多面的に見る意味でも、本書は大変興味深く読めた書籍でした。

一方で、本書の書き方はヒュースマン氏のインタビューの様子などが赤裸々に書かれているものの、その表現や言葉尻などは大変主観的であるとも取れるため、その点は十分に考慮すべきかとは思います。


■1001クラブ

WWFの成り立ちとして、1971年にオランダの国王配ベルンハルト氏によって設立された。ある種の秘密結社として会員が構成され、ロンドンのバッキンガム宮殿などで毎年パンダボールと呼ばれるイベントが開催されている。メンバーには、ヘンリー・フォード、アガカーン王子、US国防長官マクナマラ、フィアットのアニェッリ、などなど錚々たる面々が名を連ねる。


■15頭のトラ麻酔死

インドで行われるトラ調査に関して、電子探査調査のついた首輪をトラにはめて、その生存確認や追跡調査を実施する。しかし、トラに襲われる恐怖などもあって、研究者は麻酔薬を多めに打ってしまう事もあるのだとか。トラ研究家のK・ウルラシュ・カラント博士に雇われた男性は、そういった理由で15頭のトラが死ぬのを見たという。しかし博士は首輪をはめ、そのまま放置し、死んでいるにも関わらず生息調査の数に入れているのだとか。


■シェルとFSC認証

FSC(Forest Stewardship Council)認証は、WWFが共同設立者となっている。WWFの超大口スポンサーと言われるシェルも、チリ南部やアルゼンチン、パラグアイでの広大なパルププランテーションを運営しており、そこから取れる木材にはFSC認証がなされている。


■サーモンキング

世界のサケの商業生産の1/3を占めるジョン・フレッドリクセンのサーモンキングについては強烈な記載がされている。彼は18人の取り巻きを連れて略奪のために世界中をジェット機で飛び回る。水産会社マリンハーベストは年間1億匹ものサケを卸している。ある時期、養殖中のサケが牢破りを行い、13万匹が脱走した。肉食のため、入り江の何もかもを食らいつくし、地元の漁民が捕るものが無くなってしまった。


■契約書の拘束力

WWFがマリンハーベスト社と結んだ契約書に関する著者からのインタビュー内容について。契約書の拘束力、守っているかどうかのモニタリングなどについて言及したところ、曖昧な返答があり、契約書のコピーを依頼しても、ついに送付されてこなかったと。WWFはマリンハーベストからは年間約10万ユーロを受け取っているとのこと。


■ダイバーの死

チリの養殖場でのダイバーによる監視の話について。ライセンス上20mまでしか潜れないダイバーも、養殖場のある40mまで潜らされ、空気を受ける欠陥の多いホースに身を委ね、まともに機能する減圧室も少ない中で、よく命を落とすのだという。


■ASC認証

2011年、WWFは養殖業界と同意し、ASC(水産養殖管理協議会)認証プログラムを運用開始した。


■石油タンカー座礁

1966年、シェルの取締役会会長のジョン・H・ラウドンは、WWFインターナショナルの執行役員に就任した。しかし1967年、石油タンカーのトリーキャニオン号がイギリス海峡で座礁、200kmに渡り流出した原油で汚染された。この際、石油業界が避難を集中砲火で浴びる中で、WWFは沈黙、唯一、水鳥の油を洗い落とすファンドレイズのみが許可され5000ポンドが集まったという。


■ベルンハルト王配、勲章

WWFでは、世界の動植物保護に特別の貢献をしたと認めるゴールデンアーク勲章を授与しており、WWFからの最高の栄誉となる。パンダボールでこの勲章を掛けたい場合、最低10万ドルの寄付があれば獲得出来るのだとか。傑出した自然保護主義者のための金メダル、という勲章もあり、ロレックスのゴールドの腕時計も贈呈される。金メダルの資金は南アフリカ商工会議所によって寄付される。


133 円卓会議の企業

持続可能なパームオイルのための円卓会議(RSPO)が2004年にユニリーバとWWFとで設立された。会員名簿には、バイエル、カーギル、デュポン、ヘンケル、三菱、ネスレ、シェル、ADM、IKEA、ユニリーバ、ラボバンク、HSBCなどが名を連ねる。


■HSBCと世銀

再生可能エネルギーに関して、HSBCと世界銀行がWWFとの戦略的パートナーシップを組んでいる。パームオイルビジネスに先立って、WWFの気候保護プログラムに1億ドルの寄付が支払われている。


■REDD.CDM.REC

気候変動において、IPCCの一派である国連REDD(森林減少・劣化に由来する温室効果ガス排出削減)プログラムはカーボンオフセットシステムを考案した。また、パームオイル業界の企業が気候に優しい技術に投資をすると、国連プログラムのCDM(クリーン開発メカニズム)から排出権がもらえる。

このプログラムの元で、ディーゼルの代わりにバイオ燃料を使用したりすれば、カーボンオフセットと再生可能エネルギー証書(REC)がもらえる。


■1001の名簿

名簿に記載されているメンバーの一部が記載されている。

アガカーン4世、ヘンリー・フォード、ジョセフカルマン(フィリップモリスCEO)、エリックドレイク卿(BP最高責任者)、アルフレッドハイネケン、シャイク・サリーム・ビン・ラディン、ディヴィッドロックフェラー、アドルフ・ド・ロスチャイルド伯爵、アントーニオ・サマランチ


■ブラックウォーター

WWFとモンサントの契約に関して、WWFの内部告発者から政治週刊誌ザ・ネイションを手渡されながら言及された件がある。モンサントが悪名高い民間軍事会社ブラックウォーターから人を雇い、遺伝子組み換えに反対する団体に潜入させていたのだとか。ブラックウォーターは通常、外国政府の依頼などで、国際紛争や内戦に傭兵部隊を展開する。アメリカ政府が自分たちの存在を公にしたくないときに、ブラックウォーターがアメリカ陸軍やCIAの特殊作戦を行うこともあるのだとか。

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