スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書
最近スティグリッツ教授の本を読んでいます。ノーベル経済学賞を受賞して、世界銀行の副総裁を務めていた事もある方。特に世界銀行やIMFのような国際組織の及ぼす影響について論じている著書が多いようです。
学術書的な立ち位置(?)なのか、経済学の見地から述べている点が多かったです。以下、テキストばっかりですが、気になった点についていくつか。主に、格差の現状とその原因、格差が是正されない理由について触れられています。
■所得格差について(by経済学者 Olivier Giovannoni)
・経済全体における労働所得のシェア
1980年 85.3%→2010年 78.5%
・上位1%を除いた労働所得のシェア
1980年 78.4%→2010年 63.0%
→最高所得が上がる一方で、人口の大多数が経済的な逼迫にさらされている
■経済的な移動について(1994→2004 by経済政策研究所&Urban Institute)
最下層から出発→93%以上が10年経っても中間所得以内
最上層から出発→80%以上が10年経っても最上層or第二階層どまり
・教育機会の欠如
・不平等はより拡大
・負のスパイラルの構造
■市場支配力が増すと競争が減少
・競争は成功する経済には必須の特性で、企業を効率的にし価格を下げる
・米経済の多くが競争の理想形から乖離
・テクノロジー/グローバル化→市場支配力の増大に一定の役割
・政府は市場支配力を抑制しない方向を選択
・上記により経済効率は低下/人々の意欲が下がる
■知的財産権(IPR=Intellectual Property Rights)の影響について
イノベーションによる快適な暮らしの条件
①開発者はふさわしいインセンティブと資源を必要とする
②イノベーションは人々がテクノロジーの進歩の恩恵を受け入れられるよう、幅広く分配される必要がある
③IPRは上記2点を阻害している可能性がある
■金融サービスにおけるGDP比
1950s 2.8%
2008 7.6%
2012 6.6%
2014 7.3%
■金融セクターの給与
上位 1%の中の比率 7.7%(1979)→13.9%(2005)
上位0.1%の中の比率 11.0%(1979)→18.0%(2005)
■役員報酬
・非金融企業の経営幹部 上位1%のうち30%
・1930~1970の平均的なCEO報酬 100万ドル/年
・2012年、CEO上位500人の報酬 3030万ドル/年(給与とボーナスはわずか6.3%、残りは株式とストックオプション)
■労働者とCEOの平均年収比
1965 1:20
2013 1:295
■富裕層への減税
・税法の累進性を下げた事で富の不平等を拡大
・現在のインセンティブはレントシーキングを助長
・富裕層への減税が投資や成長を促した証拠は無い
・1980s最高限界税率は70%→28%
・キャピタルゲインは換金しなければ課税されない
・相続資産の価値は死亡時の時価評価を課税基準に
■労働組合
・政治的な攻撃で労働組合と労働者の権利を弱める
・労働者の交渉力の低下
・組合の弱体化により政治的/経済的な均衡が崩れる
・企業幹部への監視がなくなる
・労働組合参加率 30%+(1960)→20%(1984)→11.1%(2014)
・生産性は161%伸びた(1973→2013)にも関わらず賃金は19%上がったのみ
■貧困率の高い地域に住む児童
アフリカ系アメリカ人 30%
ネイティブアメリカン 28%
ラテン系アメリカ人 23%
白人 4%
■全児童における比率と貧困率の高い学校に通っている比率
アフリカ系アメリカ人 全体 16% 貧困率 42.5%
ラテン系アメリカ人 全体 23.7% 貧困率 31.0%
■貧困率
アフリカ系アメリカ人 25.8%
ネイティブアメリカン 27%
ラテン系アメリカ人 23.2%
白人 11.6%
■貧困生活を送る児童
アフリカ系アメリカ人 40%
ラテン系アメリカ人 30%
白人 12%
■所得分布の下位25%の家庭に生まれた子供が成人時に分布している比率
(白人)
上位25%に昇格 14%
下位25%に残留 32%
(アフリカ系アメリカ人)
上位25%に昇格 4%
下位25%に残留 63%
■最高限界税率の引き上げ
・上位1%の所得税率を5%上げた場合、10年で1兆~1.5兆ドルの追加収入
・裕福な個人の100万ドルの所得に追加で5万ドルの税金をかけると、USで全ての公立大学の授業料が無料、幼稚園前の教育プログラムに資金供給可能
238 下位99%の労働シェア
240 経済的な移動性
60 市場支配力
63 知的財産権IPRの歪め
74 金融セクター給与
91 跳ね上がった役員報酬
96 富裕層に対する減税
97 最上層のための税金革命
115 労働組合比率
132 親から子への貧困
183 最高限界税率を引き上げる
191 中間層への投資
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